この頃、悩むことがあります。
近年では、一人の生徒が多くの先生に習うことが普通となりました。
またコンクールやオーディションでは、多くの審査員が、
細かくアドバイスをしています。
一つの結果を得る場合、現在の状況から解決する方法は、
必ずしも一つではありません。
その道のりが、右側からでも左側からでも、
障害物を避けて前方にある目標に向かうことには変わりません。
しかし、その場では右と左では正反対です。
たとえて言えば、音を長くするのか、短くするのか、
また切るのか、つなげるのか。という具体的な矛盾が出てきます。
加えて音楽の常識は、時代と共に次々と変化していきます。
私の専門とするフランス近代音楽においては、
ペルルミュテールやバルビゼから習ったテンポやコンセプトは、
現コンセルヴァトワールでも必ずしも受け継がれておらず、
新しい「速いテンポ」や「過剰な表現」も採り入れられ始めました。
本場の先生でもさることながら、国内では更なる困難を感じます。
生徒は一生懸命習うわけですから、なるべく良い助言を受けるべく、
多くの注意を取捨選択しなければなりません。
しかし、矛盾した注意をどのように取捨選択して解決するかというと、
はなはだ疑問に思うことが起こります。
先生(メンター)との出会いは運命としか言いようがありません。
そこでどのように習うかも、運命の選択かもしれません。
それぞれの音楽は、多くの選択によって形成されていると、
改めて感じました。
多くの師匠のレッスンや、フランスに住んで得た経験から、
決して強要しない自分の態度は、
日本において良いのか、悪いのか悩んでいます。